サラリーマン投資家がBMW E60 M5を維持するブログ

10年来の夢だったBMW E60 M5を思い切って購入した、ごく普通のサラリーマン投資家のカーライフと独り言の記録です。

 

 

 

【BMW E60 M5】クラッチピボットピンの素材について【樹脂・真鍮・ステンレス・アルミ】

M5のクラッチ交換に必要な部品を調べていて少し気になったこと、それがタイトルにあるクラッチピボットピンです。

BMWの場合、マニュアルトランスミッションの車両にはかなりの割合で同じ品番(21511223328)のピボットピンが使われているのですが、これを純正の樹脂製から金属製にアップグレード(?)するパーツが国内外問わず至る所で販売されています。

今更説明の必要はないかもしれませんが、E60 M5のトランスミッションはSMGというシングルクラッチの2ペダルMT(AT限定免許で運転可)となっており、レリーズシリンダーから先のクラッチ機構は通常のMTと変わらないため、先述した品番のピボットピンが使用されています。

単純に金属製にすることで強度が上がり耐久性もアップするのかな……というのは想像に難くないのですが、実際のところどういったメリット・デメリットがあるのか? ネットで少し調べてみたものの、販売業者のポジショントークばかりで今一つピンとこないので、海外サイトも含めて真剣に(?)調査してみました。

そんなにとんでもなく良いモノだったら(莫大なコスト増になるとも思えないし)とっくに純正採用されているはずですよね? 「何かウラがあるのでは!?」というバイアスが掛かり気味ですが、なるべくフラットな目線で書いていきたいと思いますw

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピボットピンの素材

一般的に使用されているピボットピンは樹脂製で、その殆どはナイロンでできているようです。ナイロンは樹脂の中でも強度があり耐摩耗性も高く、また耐熱性も高いということで、摺動部であるピボットピンには適した素材であると言えます。しかし、クラッチ交換時にトランスミッションを下ろしてみるとボロボロに擦り減ったピボットピンが……なんてことも実際あるようで、使い方によっては性能面で少し心許ない部分もあるのかもしれません。一般的に、普通に乗っている分にはピボットピンよりも先にクラッチディスクが摩耗して走行できなくなるのが通常だと思いますが……

BMW E36 Clutch Installation with Pilot Bearing Replacement – Brent Ford  Racing

 

「じゃあもっと強度のある素材でピボットピンを作ってしまおう!」という発想で作られたのが金属製のピボットピンだと思うのですが(想像)、その素材にも色々あります。巷で販売されているのは真鍮、ステンレス、アルミ製がありました。それぞれの素材について、特性を調べてみましょう。

 

金属製ピボットピンの種類と特性

まずは金属製ピボットピンで一番多く見られる真鍮です。管楽器に使われるイメージですが、5円玉も真鍮製です。ピボットピンに求められる性能において真鍮を採用するメリットとは、加工性と耐腐食性、樹脂よりも高い強度、金属の中では価格が安価な点です。しかし、強度が高いといっても耐摩耗性が高くないとピボットピンとしては高性能とは言えませんよね。金属全般に言えることですが、耐摩耗性というのは素材そのものよりもどう表面加工されているかで大きく変わってくるようです。モノによってはこんなに摩耗してしまった例もあるようです。

 

次にステンレス。特性としては非常にサビにくく、耐熱性、強度、加工性に優れる素材です。ピボットピンの素材としてのメリットは真鍮とそう変わりません。硬度でいえば一般的に真鍮よりも高いのですが、同時にコスト面でも真鍮より高いようです。

最後にアルミ。特性としては比重が軽く、加工性、耐腐食性が高い素材です。耐熱性は真鍮よりも劣るようですが、ピボットピンに求められる耐熱性としては十分です。軽さが最大の武器なのですが、固定されている小さな部品であるピボットピンにはメリットがないように思います。硬度は一般的に真鍮より高く、ステンレスよりは低いです。重量あたりのコストは真鍮・ステンレスよりも高いのですが、比重が軽いため体積当たりで考えると大きな差はないようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属製ピボットピンのメリット・デメリット

それぞれの金属に特性がありますが、ピボットピンの素材としてはどれも十分に条件を満たしているように思います。ナイロン製ピボットピンに対しての金属製のメリットとしては、やはり耐摩耗性と耐衝撃性になるのでしょうか。サーキット走行など、ハードな使用環境においては一定の効果があるのかもしれません。実際に、社外品の強化クラッチではセットで金属製のピボットピンが用意されているケースもあるようです。一方、部品の寿命という点においては、基本的にクラッチ交換の際にセットで交換する部品なのであまりメリットはないように思います。ピボットピンの寿命>クラッチディスクの寿命であれば問題は起きないはずなので。

デメリットとしては、ピボットピンとそれが接触するレリーズフォーク、そのどちらも金属となるため異音が発生する可能性、そしてレリーズフォークや周辺部品を損傷させてしまうリスクがあることでしょうか。例えばレリーズベアリングが固着してしまった際に、ナイロン製ならピボットピンが破損するだけで済んだものが、金属製だったばかりにシャフトやベルハウジングを損傷させてしまうという可能性です。ピンを金属製にしたことで、最終的にレリーズフォークに穴が空くなんて話もあるとかないとかw おそらくそうなる前に先にクラッチディスクが寿命を迎えると思いますので、クラッチ交換の際にレリーズフォークもセットで交換するなら特に問題ない気もしますが……アクセルワークが神懸ってるドライバーなら先にレリーズフォークがやられるかも!?

 

純正採用されない理由は?

メーカーの公式な見解は分からないため何とも言えませんが……金属製のピボットピンが純正で採用されないということは、少なくともメーカーは「性能面ではナイロン製のピボットピンで十分」と考えていることは間違いないでしょう。その他、採用しない理由として考えられるのは「コストアップに対する費用対効果が低い」「異音や他パーツへの攻撃性を考慮した結果」あたりでしょうか。前者が理由であれば、交換する意味は少なからずあるということにはなりますが、後者であれば純正品とは別のリスクを抱えることにも繋がります。こういう場合は大抵、「素直にメーカーが指定している部品を使用する」というのが最適解になっちゃうんですよね。面白味はありませんが、優秀な開発者達の集団であるメーカーが出した答えが「ナイロン製のピボットピン」ということは、きっとそういうことなんでしょう。

 

M5はどうする?

そして今回のクラッチ交換でピボットピンをどうするかですが、海外サイトでも金属製ピボットピンへの交換については賛否両論でした。正直なところ、ネタ的には金属製を試してみたい気持ちはあります。しかし、何か不具合があると「トランスミッション脱着の刑」に処されると思うと躊躇してしまうのも事実w 今回のクラッチ不調の原因が実はピボットピンで、クラッチディスクはまだ使用限度に達してない……なんてことであれば話は別ですが、その可能性は低いでしょう。通常通り、ピボットピンより先にクラッチディスクがダメになっている場合、両方同時に新品交換すれば次回も先にクラッチディスクがダメになるはずなので、純正のピボットピンで何ら問題はありません。一応、純正品と金属製を両方用意しておいて、トランスミッション内部の状態を見てからどちらを使用するか決めるという手もあります。もし金属製を選ぶなら、個人的にはステンレス製でしょうか……とか何とか言ってても結局、無用なリスクを避ける為おそらく純正品を使うことになると思いますがw

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