さて、ようやく診断機の使用にも慣れてきたということで、遂に本題であるDSCのプログラミング/コーディングを行う時がやってきました。
DSC故障についての前回の記事はこちら↓
BMW診断機についての前回の記事はこちら↓
なぜ、DSCユニットを交換するとプログラミング/コーディングが必要なのか?
それは、取り付けたDSCユニットを車両に適合させるためなのですが、具体的には
DSCユニットへのVIN(車両番号)の書き込み(プログラミング)
車両仕様に合わせた設定の書き込み(コーディング)
を行う必要があります。
上記はソフト的な作業になりますが、その後は診断ソフトによる機械的な部分の初期化/調整も必要です。
これらは全て、今回入手したBMW診断機で行うことができます。
ではやっていきましょう!
※手順についてですが、書き始めるとかなりの長さになるうえ、おそらく需要もないと思いますので今回は割愛します。後日、ネタが無くなった時や気力のあるときに記事にするかもしれません(笑)
決して出し惜しみではありませんので、問い合わせがあればお答えします。
まずはINPAというソフトを使って、DSCユニットの情報を確認します。
INPAのTop画面です↓
DSCユニットに現在書き込まれているVINを確認すると「yyyyyyy」となっています。
なぜ元の車両のVINが表示されないのか謎ですが、ショップでプログラミング作業が失敗したせい?
いずれにせよ、VINの書き込みは必須のようです。ちなみに、診断ソフトを使ってエラーコードを読み取ると「5E1F 異なるシャシーナンバー」というエラーが表示されますが、これがまさにVINの不一致を示しています。
また、同じ画面でプログラムの「ZBナンバー」というものも確認できます。これはユニットに必要なプログラムの集合体(?)の番号(アッセンブリーナンバー?)で、感覚的にはプログラムのバージョンNo.みたいなものだと思います。プログラムの更新や書き換えの際に知っておく必要があります。
そしてVINの書き込み作業ですが、どうやらTool32もしくはWinKFPというソフトを使ってできるようです。
Tool32は主に車両情報の書き込みやコーディング(他にも色々できるみたいですが難しそう)、WinKFPはユニットへのプログラム書き換えを行うソフトみたいです。
とりあえず、プログラム書き換えというとハードルが高そうなので、まずはTool32を試してみます。
Tool32のTop画面です↓
結果は……ダメでした(汗)
手順は何度も調べまくって確認したので合っているはずですが、何をやっても何度やってもVINを書き込むことはできませんでした。
新品の、何もVINが書き込まれていないユニットなら書き込めるのかもしれませんが、私の車両ではムリでした。
ということで次なる方法、WinKFPを使ってやってみます。コイツは、プログラムの書き換えと同時にVINを書き込むことができるようです。
WinKFPのTOP画面です↓
ここで、さっきINPAで確認したZBナンバーを使ってDSCのプログラムを自動で見つけてくれます。
元々プログラムされていたZBナンバーは2005年の「7837326」でしたが、もう1つのZBナンバー「7841983」も出てきました↓
当然、数字の大きい方が新しいので迷わず「7841983」を選択、VINを入力してプログラミング開始!
しかし……
「ハードウェアが異なります!」みたいな英語のエラーが出て更新できず。
仕方ないので、元と同じ「7837326」を選択して再度プログラミング開始↓
ショップに聞いた話だと「この進捗バーが 90%越えたところで固まってプログラミング失敗する」と聞いていたので、ドキドキしながら見守ります。
すると……あっさり成功!
実は色々と調べている途中で見つけたのですが、診断PCがWindows10の場合、古い車のプログラミングが失敗することがある、このときはWindowsXPのPCで作業すると成功する、という情報がありました。ショップが失敗した原因はこれだったのか!?
私のPCはWindows8ですが、ギリギリセーフだった?(笑)
プログラミングが完了したので、再度INPAでVINを確認すると……
私の車両と同じVINに変わっています!
「キタ━(゚∀゚)━! 遂に我がVINがDSCユニットに!!」
と、今度は意気揚々にDSCユニットのコーディングを行います。
コーディングはNCS Expertというソフトを使用します。
NCS ExpertのTOP画面です↓
コーディング作業もすんなりと完了し、次はDSCユニットの調整作業を開始!
今度はディーラーで使用している診断ソフト「ISTA/D」を立ち上げて調整していきます。
ここまではサクサクと進みました。
しかし……
DSCユニットの調整は難なく終了したものの、同時に必要な「舵角センサー」の初期化に失敗します↓
何度も作業をやり直しましたがダメ……
残ったエラーコードは以下です↓
走行後はエラーの数が増えます↓
DSCユニット交換前は「5DF0 DSCポンプモーター」と「5DF1 DSCポンプモーターコネクター」だけでしたが、それらが無くなった代わりに他のエラーが現れました。
ちなみに、CCCのエラーはライトのコーディングで遊んでたら出たもので、今回の故障とは関係ありません。
メーターに表示される警告灯ですが、ABSのランプは消えたものの、DSCとブレーキ警告灯は点いたままです↓
これは一体どういうことなのか、また調査の日々が始まりました(笑)
まず、舵角センサーの初期化ができないということで
「色々やっている内に舵角センサーが追加で故障した」
可能性を疑いましたが、上記の画像の通り舵角センサー自体のエラーは出ていません。舵角センサーもBMW定番のトラブルで、故障するとウインカーが戻らなくなったりするらしいのですが、そんな症状も見られません。
更に調べていくと、舵角センサーの信号はDSCユニットにF-CANを介して送られているようです。その他のコンピューターにはPT-CANで信号が送られているようで、上記画像のエラー「D373」は、「DSCユニットが舵角センサーのF-CAN信号を受け取っていない」というエラーのようです。
PT-CAN絡みのユニットに一切エラーが出ていないことから、問題は「DSCユニット、またはDSCユニットと舵角センサー間の配線」に絞られます。
次にEDC(可変ダンパー)のエラーですが、これは各車輪にある「回転数センサー」の信号をDSCユニットが受け取ってEDCの制御ユニットに送っています。
従って、このエラーの原因は「回転数センサー、DSCユニット、EDCユニット、またはその間にある配線」に絞られます。
同様に、ナビの回転信号やCASの車速信号、SMGの舵角信号も全てDSCユニットが関わっています。
そして、複数の配線やユニットが同時におかしくなるなんて基本有り得ない、またエラーの全てにDSCが関わっている様子。
以上を総合的に考えると……もうお分かりですね、DSCユニットがダメです(爆)
結局、DSCユニット交換してもアカンのかい!!
というツッコミが聞こえてきそうてますが、結果的にはそうなります。
そして原因ですが……交換後にABS警告灯が消灯したことと、5DF0/5DF1エラーが消えたことから、おそらくDSCユニットは故障していません。
では何故DSCとブレーキ警告灯が消えないのか?
舵角センサーの初期化に失敗するのか?
新たなエラーが発生しているのか?
私が出した結論、それは
「E60 M5のDSCユニットは、前期と後期で見た目が同じで取り付けも問題なくできるが、中身のコンピューターが違う」
です!
いくらググっても明確な答えは分かりませんでしたが、そうとしか考えられません。
E60 M5のDSCユニットは品番を調べるとモデルライフの中で何度も変わっており、最終的に6つの品番が存在します。私はそれを事前に知っていましたが、RealL OEMを見ると最終品番が「遡って交換可能」とあったことから、普通に互換性のあるものだと思っていました。しかし、どうやら古い車両に新しいDSCユニットは付くけれど、その逆はダメみたいです。
元々付いていた後期DSCユニット、品番34527839351-01 (2007年3月製造)↓
中古で買った前期DSCユニット、品番34527837326-01 (2005年10月製造)↓
画像の「Ate Controller」の下に記載されている番号(10.0961~)がAteの社内品番だと思われますが、これが一致していれば問題なく動作するのではないかと思います。
思えば……WinKFPで出てきたZBナンバー「7841983」、あれがおそらく後期用のプログラムなのでしょう。そして「7841983」がプログラムできないDSCユニットは前期専用ということになるのだと思います。
ふと、プログラムデータ「7837326」の中身だけを「7841983」に差し替えて無理矢理プログラミングしてやろうかとも考えましたが、万が一車両火災にでも発展したらシャレにならないので止めておきます(笑)
ということで、この問題は一旦仕切り直しです。今のままでは一生警告灯は消えないので、残念ながら今回の交換工賃はムダになってしまいました(汗)
まあ、ここに辿り着くまでに診断ソフトの使い方や、車両の仕組みについてかなり勉強させられましたので、知識や経験は身に付きましたが……
こうなってしまうと残る手段は1つ、元々付いていたDSCユニットを現物修理するしかありません。
新たな戦いの始まりです(笑)
最後に……同じ失敗でこれ以上被害者を出さないために
「中古部品での修理は、品番確認と前期後期をちゃんと確認」
してくださいね!
少しでも品番が異なる場合は、手を出さない方が無難です!